「[本]のメルマガ」誌より部分転載
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■「現代思想の最前線」/ 五月(ごがつ)
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第27回 英米語圏の2001年人文社会書ベストを勝手に選んでみる(フェア総括篇)
ピエール・ブルデューが死んでしまった。パリの聖アントワーヌ病院にて、今月(2002年1月)23日夕方、がんで死去。71歳だった。「左の左」、戦闘的知識人の勇姿がもう見れない。25日付の各紙は彼の死をトップ記事で報じている。「リベラシオン」紙にはロニー・ブローマンらのインタビューが、「ル・モンド」紙にはシラクやジョスパンらの追悼コメントが掲載されたが、同紙には、ブルデューと同じく1930年生まれのジャック・デリダも言葉を寄せている。翻訳家の中山元さんが、25日配信のメール・マガジン「哲学クロニクル」243号で、いち早くこのデリダのコメントを試訳され、紹介している。サイトにはまだアップされていないが、恐らく近々にネット上でも読むことができるだろう。
哲学クロニクル:http://nakayama.org/polylogos/chronique/
リベラシオン:http://www.liberation.com/
ル・モンド:http://www.lemonde.fr/
「リベラシオン」サイトで紹介された彼の著作目録によれば、本年に入ってから、"Interventions politiques (1960-2000).
Textes & contextes d'un mode d'intervention politique
specifique" recueil de textes choisis par Franck Poupeau というのが最新刊として出た(あるいはこれから出る)らしいが、アラパージュやリーヴル・アン・リーニュ、アマゾン・フランスを調べてみるものの、それらしきものは見当たらない。それほどに新しいのか、近刊なのか、どちらかなのだろう。論文集だが、彼の最後のメッセージが掲載されているのかどうかも、まだわからない。
著作目録:http://www.liberation.fr/flash/bourdieu/biblio.html
さて。三省堂本店での洋書フェアの件だが、どうなったか。1月15日まで開催予定だったが、後続のフェア展開が遅れた都合上、じつは19日までやっていたそうだ。結果は上々。売上目標も越えた。具体的な数字は企業秘密なので公開できないが、思わず頬が緩む結果だと言っておこう。担当者氏も「ほとんど補充ができなかったにもかかわらず、満足がいく」ものだったと話していた。和書のフロアで洋書フェアをやるということの特殊性もあって苦労は絶えなかったが、たくさんの反響があり、応援してくださる方々と出会えるきっかけにもなった、とも言っていた。
ある翻訳家の方は、フェアを覗いてみて購入してくださった感想として、「アマゾン・ジャパンに比べると千円高かったですが、店頭での出会いの楽しさにはカネで買えない価値があると思います。これだけはまだ通販には望めません(……)」と仰っていた。とてもうれしい。書物には書誌データだけでは伝えきれない、現物のアウラというものがある、と私は常々感じている。その実感を色んな方たちと分かち合えるから、書店業はすばらしいのだ。もちろん、書物のアウラの感じ方は個々人で違う。しかし、この目に見えないアウラを知り、耳には聞こえない書物たちのざわめきを感じることこそが、書店人の特権的な魔法なのだ。
気になる売れ筋順位だが、一位はチョムスキーの"9-11"だった。邦訳書ももちろん売れたが、原書も売れた。二位はジジェクの"On Belief"。"Thinking in Action"シリーズは総じて売行がよかった。同じく二位はクリッチリーが書き下ろした才気溢れる入門書"Continental Philosophy"。面白くて一気に読んだ、という読者の方もいた。
三位には三点が同時にエントリー。ロールズの名著の改訂版"Justice as Fareness: A Restatement"と、
サイードのインタビュー集"Power,
Politics, and Culture"、そしてデリダの英訳論文集の"On Cosmopolitanism and Forgiveness"が並んだ。
このほか、補充ができていたらもっと売れたであろう書目はあったが、中でもヌスバウムの二点は動きが速かった。フェアには間に合わなかったが、今月最新刊が出ている。"Martha C. Nussbaum Ethics and
Political Philosophy: Lecture and Colloquium in Munster 2000"という講演録がそれだ。Angela Kallhoffの編纂で、Lit Verlagから刊行されている。ISBN:3825848817
さる1月14日(月/祝)夜10:00-10:45には、NHK教育テレビ「ETV2002」で、ヌスバウムとアガンベンへのインタビューが「対論"テロ後の世界"を読む」と題され放映された。ご覧になった方は、ヌスバウムの言うHuman DevelopmentやCapability(前者は「人間開発」、後者は「潜在能力」と訳されている)が、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センの問題設定と非常に近いことを感じただろう。実際彼らは共同研究をかつて行っていた間柄だが、集英社新書の最新刊としてつい最近出版されたセンの講演集『貧困の克服』に付された訳者大石りら氏による著者紹介文でも、そのことが触れられていた(大石氏はヌスバウムが「潜在能力」の機能を項目立てていることに満足されていないようだが、私はヌスバウムがきっちりと具体例を出していることの積極性を買いたい)。
なお、先月の立命館大学シンポジウムのあとの立食パーティで、ヌスバウム本人に訊ねてみたのだが、彼女が自分の著書でもっとも翻訳されてほしいのは、"Cultivating Humanity: A Classical
Defense of Reform in Liberal Education"1997, Harvard
University Pressだと言っていた。リベラルという言葉を見るとついアメリカ帝国主義を感知して殺気立ってしまう、という方にも一読をお奨めしておきたい(98年にReprint edition, ISBN:0674179498が出ている)。
ひとこと付け加えておくと、アマゾン・コムの2001年ベスト哲学書の第二位に、彼女の"Upheaval of Thoughts"が入っていたのにはびっくりした。第一位が孫子の「兵法」というのにも驚いたが(当メルマガ15日号の掩耳さんが喜びそうな話題である)、これはエディターのチョイスではなくて、実際にアマゾンで「売れた」哲学書の順位なのである。40ドルもする760頁もの大著がよく売れたものである(もっともアマゾンでは値引きされているが)。
私個人のベストを言うと、ノルウェイの画家Odd Nerdrum関連の二点が2001年のもっとも嬉しい収穫だった。Richard VineによるNerdrum論を含む、大画集"Odd Nerdrum: Paintings, Sketches and
Drawings" Gildendal, ISBN:82-489-0121-1と、Nerdrum自身の論文を多数含む"On Kitsch" Kagge Forlag, ISBN82-489-0123-8である。やっぱりこいつは変だ。彼が自宅前で絵を書いている写真には、何かしら狂気を感じるし、ぞっとするほど明晰なキッチュ論は、ひとつの文明論であり、他を圧倒する芸術論的マニフェストですらある……。
三省堂の洋書フェアの結果がまずまずだったこともあり、哲学思想書コーナーでは、小さいながら洋書棚の設置がいま、試みられている。カルチュラル・スタディーズの棚と同居しているのがそれで、随時、最新の書目を仕入れていくことになった。この連載とも連動していくかたちで、今後も紹介させていただこうと思っている。
[2002年1月25日]
出典:「[本]のメルマガ」mailmagazine of books vol.94 [ブルデューを悼む
号] 2002.1.25.発行より。
※参考までに第94号の目次とトピックス記事、編集後記と奥付を以下に引用します。
■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
→イベント、ブックフェア、バーゲン、復刊&オンデマンド情報など。
★ウェブマスターからのお知らせ
→半年間も小誌ホームページが更新されなかったのはナゼか? 真実を語る!
★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→例の洋書フェア、結果はこうでした。総括篇をお届け。
★「エルドゥラ」/ウタ
→おおっと、そんな急展開が! でももう少し待ってください。休載です。
★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→新連載準備中のため、今回は休載です。
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発言――米同時多発テロと23人の思想家たち 1月28日発売
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■中山 元 編訳 四六判・並製/248頁/ISBN4-255-00141-3/本体1600円
■発行:朝日出版社( http://www.asahipress.com/ )
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デリダ、サイード、ハンティントン、フクヤマ、ハーバーマス、ジジェクら、錚々たる世界の思想家・知識人たちの待望の発言集、ついに刊行!「多数の論考の中から、この事件がたんにアメリカとイスラム諸国の問題ではなく、ぼくたちのだれもが考え抜くべき思想的な問題であることが、はっきりとみえてくるような文章を集めるようにしている。…読者は、それぞれの表現者を相手に、論争をしかけてみられてはいかがだろう。選り抜きのつわものぞろいだから、絶好の思考のレッスンになるだろう。」(「編訳者あとがき」より)
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■トピックス
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■四方田犬彦+小沼純一トークショー「ゴダール『映画史』を読む」
先月(2001年12月)、産業図書より発売された論文集『ゴダール・映像・歴史』(四方田犬彦+堀潤之=編、本体2800円、ISBN4-7828-0141-6)を記念して、六本木の青山ブックセンターZONE店で、下記の通りトークショーが行われる。これと並行して現在、青山ブックセンター六本木店(電話:03-3479-0479)では「ゴダール『映画史』フェア」を開催中。「映画史」DVDをはじめ、引用された映画や音楽のDVDおよびCD、そしてゴダール関連書籍(フランスのガリマール社より刊行された『映画史』4巻セットほか多数)が展開中!
四方田犬彦+小沼純一トークショー「ゴダール『映画史』を読む」
期日:2002年2月16日(土)午後2:00-4:00
会場:"New Tokyo Life
Style Roppongi Think Zone"(青山BC・ZONE店)
東京都港区六本木8-2-31 ZONE六本木ビル(旧東日ビル)1F
青山ブックセンターZONE店(電話:03-5771-5241 営業時間:11:00-22:00)
※あなたはもう覗いてみましたか→ http://www.zoneroppongi.com
参加要領:先着200名[要電話予約:03-3479-0479(青山BC六本木店)]
入場料:700円
『ゴダール・映画・歴史:「映画史」を読む』四方田犬彦+堀潤之=編
産業図書、2001年12月刊、A5上製258頁カバー装、本体2800円、4-7828-0141-6
収録論文の筆者――ゴダール、セルジュ・ダネー、ジャン・ドゥーシェ、マリ=ジョゼ・モンザン、ジェラール・ヴァイクマン、ベルナール・チュミ、ジェイムズ・ウィリアムズ、ベルナール・エイゼンシッツ、マイケル・ウィットなど。
※ピーター・ブルックスの名著『メロドラマ的想像力』もついに刊行!詳しくは産業図書HPで→
http://www.san-to.co.jp/
■人文系版元の復刊&オンデマンド本情報!
人文系版元八社共同による毎年恒例のリクエスト復刊事業〈書物復権〉は、今年ではや六年目。今回のテーマは「70年代」。主として1970年代に刊行され、かつ品切期間の長い書目を基準として候補が選出された。ヒンティッカ『認識と信念』紀伊國屋書店、ウーティッツ『美学史』東大出版会、ムーア『倫理学』法政大学出版局、ホブズボーム『産業と帝国』未来社など、全80候補はいずれも名著揃い。リクエスト(注文ではありません)は3月15日まで受け付けている。
一方、これも人文系版元六社による恒例のオンデマンド出版事業〈リキエスタ〉は先月(2001年12月)中旬より第二弾を発売開始。今回は五社九点が刊行されている。レジス・ドブレほか『屈服しないこと』みすず書房、ヘイドン・ホワイトほか『物語と歴史』平凡社、グレーヴィチ『マルク・ブロックの遺言』平凡社など、松崎天民『東京カフェー探訪』筑摩書房など、いぶし銀の品揃え。品切がなく、1冊だけのオーダーにも対応できるのが、オンデマンドの魅力だ。
書物復権:http://www.kinokuniya.co.jp/01f/fukken/index.html
リキエスタ:http://www.transart.co.jp/richiesta/main2.html
■クラフト・エヴィング商會フェアがリブロ池袋で開催!
『ないもの、あります』『らくだこぶ書房21世紀古書目録』(筑摩書房)などの趣向を凝らした著作で知られる「クラフト・エヴィング商會」が、お気に入りの100冊を紹介。装幀を手がけた『稲垣足穂全集』(筑摩書房)をはじめ、堀江敏幸
『回送電車』(中央公論新社)、石井好子
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(暮しの手帖社)、大島弓子『グーグーだって猫である』(角川書店)などを展示・販売する。題して「クラフト・エヴィング商會が選ぶ100册」。2002年1月28日(月)より、リブロ池袋店文芸書コーナーにて。
※池袋店のほか、リブロ町田店でも2月5日より開催予定。
http://www.libro.jp/
■三日間限定!第13回青山ブックセンター本店「洋書ビッグバーゲン」
恒例の洋書新刊20%オフを始め、20〜80%オフのバーゲン本が多数。日頃狙っていたあの本、この本をぜひこの機会に。きっと掘り出しものが見つかります。バーゲン会場および本店店内において合計一万円以上を購入した方には、宅配便送料が無料になるとのこと。アート書の宝庫へ、行かねば買わねば!
日時:2002年1月27日(日)10:00〜22:00、28日(月)10:00〜22:00、29日(火)10:00〜21:00
会場:青山BC本店 カルチャーサロン青山(今回より会場が変りました)
お問い合わせ先:電話03-5485-5511(10:00〜22:00)
http://www.aoyamabc.co.jp/
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■編集同人備忘録
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ウェブマスターからのメッセージ掲載は本誌初めて! ちなみに「あるいは〜言い訳」というサブタイトル?は編集同人がつけたものではなく、ご本人が書いたものです。いよいよHPリニューアル。もっとシンプルになります。 五月
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