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■「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
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第35回 人文社会系英米語洋書フェア2002顛末記(後編)

神保町の三省堂書店神田本店4F人文書売場で開催している洋書フェアは、会期を延長して今月いっぱい行われることになった。後半戦に向けて、私は1月9日(木)夕方、商品の入替および並び替えをしに売場を訪れ、全面的に手を入れて、仕上げにPOPを書いた。ガラリと変えてみた新しいフェア台の様子は、以下の写真の通りである。

フェア台の様子(写真) http://biblia.infoseek.ne.jp/g/pic030111s.htm

ネグリの最新刊自伝『帰還について』(未訳、作品社近刊)や、ドゥルーズの最新論文集『無人島とその他のテクスト』(未訳、某社刊行予定)、『純粋戦争』以後のヴィリリオとロトランジェの最新対談集『薄明の暁』(未訳、セミオテクスト刊)、ジジェクが何度も改訂した911論『現実界の砂漠へようこそ』(『現代思想』2001年10月臨時増刊号・特集「これは戦争か」所収)の最新ヴァージョンを先頭に、ネグリの『構成的権力』最新イタリア語版や、ヴィリリオの911論『グラウンド・ゼロ』、アガンベンの最新著『開け』などを最前列に配置。

後列右手にはメディア・アクティヴィストのヘアート・ロフィンクによる最新論文集『ダーク・ファイバー』や、気鋭の政治哲学者ウィリアム・コノリーによる『ニューロポリティクス』のほか、ヴィレム・フルッサーの論文集をはじめとするいくつかの映像論をまとめた。そして、左手にはアメリカの道徳思想を中心に、アマルティア・センによる最新作大著『合理性と自由』、先頃死去したジョン・ロールズのリーダー(ケンブリッジ大学出版)やイアン・ハッキングの『歴史的存在論』のほか、ジョージ・レイコフ、ヒラリー・パトナム、ジョージ・サンタヤーナ(!)などの新刊のような下記リストに載っていない書目も並んでいる。お見逃しなさいませんように。

選書リスト http://biblia.infoseek.ne.jp/g/bestlist02.htm

中ほどにはショシャナ・フェルマン女史やセイラ・ベンハビブ女史など、アメリカを代表する批評家の最新作を置き、そのうしろには面陳でジェンダーやレイシズム、マスメディアやカルチュラル・スタディーズ、ニューレフト以後のマルクス主義理論、地理学的人類学などのリーダーを見せる。面陳の右端に見える分厚い本とその隣は、生物学者グールドの遺作『進化論の理論構造』と、科学史家のイヴリン・フォックス・ケラーのこれもまた進化論をめぐる最新著だ。

最後尾右手は、デリダ以後の若手哲学者たち――たとえばサイモン・クリッチリーやアレクサンダー・ガルシア・デュットマン、ヘント・ド・フリースなど――の新刊を並べ、左手は、身体論、障害論、サイボーグ論などの面白そうなリーダーを置いた。真ん中にあるのは、優れた若手建築批評家サンフォード・クウィンターの『時間の建築』や、文芸批評の大御所ジョージ・スタイナーの最新刊などだ。

どの本も見逃せないが、これまでよく動いているのは、『現代思想芸術事典』(青土社)の姉妹篇にあたる『文化理論』や、イーグルトンの『マルクス主義と文学理論』新版、チェーザレ・カサリーノの『海のモダニティ』、ヴィリリオの『グラウンド・ゼロ』、ブライアン・マスミの『ヴァーチャルなものの寓話』、コノリー『ニューロポリティクス』などで、そのほかはまんべんなく売れているのだが、中でもダントツに売れているのはネグリとハートの『帝国』である。

もちろん読者の皆さんはついにその邦訳が以文社から刊行されたのをご存知だろうと思う。しかし、原書も売れ続けているのである。たぶん、これからも売れ続けるだろう。『現代思想』の2月号、特集「『帝国』を読む」もまもなく発売。すでに先のメルマガ臨時増刊号(『帝国』特集号)掲載の記事でも書いたが、今年中には、先に挙げたネグリの自伝も翻訳刊行されるだろうし、『帝国』の重要なキーワード「マルチチュード」を丁寧に解説したパオロ・ヴィルノの『マルチチュードの文法』も月曜社から刊行される。ちなみに、私がライターを(本名の方)つとめている『インターコミュニケーション』の思想書紹介コーナーで、次号(2月27日発売、44号)は『帝国』前後のネグリの著作活動の動向をまとめてみたので、興味のある方は御高覧いただきたい。メルマガでも、今後ともネグリについてはリポートしていくつもりだ。

さて、フェアの話に戻る。リスト外だが、ぜひお奨めしておきたい書目のことだ。それは、ラウトレッジから昨年刊行されたインタビュー集『哲学者たちの会話(Philosophers in conversation)』である。

これの何がいいかと言うと、まずこの一冊で現代思想を牽引する大物たち14人の入門的インタビューが読めるということである。スタンリー・キャヴェル、ウンベルト・エーコ、ヒラリー・パトナム、W・V・O・クワイン、ジョン・ロールズ、リチャード・ローティ、マイケル・サンデル、コーネル・ウェストなどだ。これは、1991年以来刊行されている「ハーヴァード哲学誌」に掲載されてきたインタビューをまとめたものだ。一人一人の思想家について、顔写真とともに親切な略歴解説が付されているのもいい。アメリカの哲学シーンを知る上ではまたとない入門書である。

さらに、今回のフェアではこの後半戦にノーム・チョムスキーの新刊が3点、新規で入荷している。『合衆国権力の傘(Umbrella of U.S. Power)』『メディア支配(Media Control)第2版』『侵略行為(Acts of Aggression)』である。いずれもセヴン・ストーリーズ・プレスより刊行されているパンフレット形態の小さな本だが、この手頃さがいい。鋭利な政治的分析のアクチュアリティをポケットに忍ばせる、という魅力。なお、チョムスキーの邦訳新刊『グローバリズムは世界を破壊する――プロパガンダと民意』が明石書店から刊行されたばかり(ISBN:4-7503-1674-1)であり、要チェックである。同じく新刊の、サイード『イスラエル、イラク、アメリカ』(みすず書房)ととも
に、売れていくだろう。

この洋書フェアもあと残り一週間。取り置きも可能だが、ぜひ会期中にお立ち寄りいただければこれ幸いである。[2003年1月25日]

三省堂書店神田本店
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-1 電話 : 03-3233-3312
営業時間:10:00-20:00 ※年内無休
4F人文書売場フェア「2002年人文社会系洋書ベストセレクション」
http://www.books-sanseido.co.jp/event_2000ca.html?MBR_NO=&SESSION=
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初出:[本]のメルマガ」第130号(2003年1月25日配信)

人文社会系英米語洋書フェア2002顛末記(前編)は→こちら

オマケ……第130号のトピックス記事……「谷川俊太郎書店」って何だ?

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■トピックス
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■緊急出版『ブッシュ妄言録』はあなたを笑い死にさせるかもしれない

『ブッシュ妄言録』フガフガ・ラボ編、村井理子訳、ぺんぎん書房、
本体価格900円、B6判123頁、ISBN:4-901978-02-0

人気ウェブサイト「ブッシズム http://www.fugafuga.com/kenkyu/bushism/ 」から生まれた本だそうだ。賢明なる読者の皆さんは以前からご存知だろうが、現大統領の迷言の数々は世界中で物笑いの種になっている。冗談としか思えないほど、ブッシュは可笑しいことを喋る。英国人の子供から、ホワイトハウスはどんなところかと聞かれて、「白いよ」と答えたり、昨年の誕生日にマスコミからどんな気持ちかを尋ねられて、「少し年をとった気がする」と答えるなど、彼の天然ボケは超一流である。大統領就任前にすでに彼は「私のことを大統領として知能が足りないといっている人達は、その事実をまだまだ甘く見ている」と真面目に発言したり、就任後の来日エピソードでは「愛媛」を「イーヘーミー」と発音したり、ブラジル大統領に「ブラジルには黒人はいるの?」と聞いてみたり、もうこれはひとを笑殺したいのか、というほどの超一流なのだ。腹もよじれるボケにつぐ大ボケのオンパレードがこの一冊に満載される。通勤通学電車で読もうとしているアナタ、アナタは無謀なチャレンジャーだ。

http://www.penguin-shobo.co.jp/


■「谷川俊太郎書店」が2〜10月まで、ジュンク堂池袋本店内にオープン

2月9日(日)午前11時に、「谷川俊太郎書店」がジュンク堂書店池袋本店の7F特設会場にてオープンする。谷川俊太郎氏自身が店長をつとめ、店長が選ぶ書籍600点を10月5日まで一挙展示販売する。谷川氏は毎月一回「来店」する予定。お問い合わせは電話03-5956-6111、ジュンク堂池袋本店(営業時間:午前10〜午後9時)まで。 

○店長来店日:2月9日11時〜、3月1日15時〜、4月以降の来店日は未定。

http://www.junkudo.co.jp/

 
■人文書共同復刊「書物復権」第7回がスタート

岩波書店、紀伊國屋書店、勁草書房、東京大学出版会、未来社、みすず書房、法政大学出版局、白水社、以上の合計8社が共催する毎年好例の復刊事業「書物復権」の第7回がスタートした。候補書目が公開されており、一例を挙げると、アーレント『精神の生活(上・下)』岩波書店や、ホッファー『大衆運動』紀伊國屋書店、ケレーニィ『プロメテウス』法政大学出版局、ハイゼンベルグ『自然科学的世界像』みすず書房など多数。今後の日程は、2003年2月末日までが、リクエスト受付期間。2003年5月初旬には復刊書名決定し、予約受付が
開始され、2003年6月初旬に発売となる。ふるってご参加を!

http://www.kinokuniya.co.jp/01f/fukken/index.html


■講談社と米国ランダムハウス社、合弁出版社を5月に設立と公式発表

講談社は1月23日(木)、ベルテルスマン・グループの米国最大手出版社ランダムハウスと、来たる5月に合弁会社を対等出資の日本法人として設立する旨を正式発表した。講談社にとってはコミックなどの分野の海外進出の強力な足がかりとなる。一方、ランダムハウスは良質な翻訳書を提供することを目標としているという。傘下に100以上の系列出版社を抱えるランダムハウスの膨大なコンテンツの版権は、優先的にこの合弁会社が扱えるようになる。彼らの言う「グローバル化」がどれほどの経済効果をもたらすことになるか、書籍売上
低迷の時代における大手の挑戦が注目されている。

http://www.kodansha.co.jp/press/030123rhkd_j.html

※続報。講談社は後日の別報道で、2002年度は戦後初の赤字決算で取締役四人が退任したことが伝えられている。[2003年2月20日]


■満席必至!「蓮實映画史」トークイベントへの予約はお早めに
 
映画批評本を河出書房新社から続々と繰り出しつづけている蓮實重彦氏。語りだしたら止まらない、聴衆を魅了してやまない闊達な名講義は毎回予約開始早々に満席になる。今回も入場無料で定員オーバー必至! 聞きたい人は予約を急げ!

蓮實重彦とことん日本映画を語る VOL.3

日時: 2003年2月28日(金)19:00〜21:00
会場: 青山ブックセンター本店 カルチャーサロン青山
お問い合わせ先: 03-5485-5511(10:00〜22:00)
参加方法:定員120名様、入場無料。
注意事項:要電話予約(03-5485-5511/10:00〜22:00)

http://www.aoyamabc.co.jp/public-html/abc-fair/fair-event.html


■みすず書房創業者が語る、出版文化への限りないオマージュ

みすず書房の創業者、小尾俊人(おび・としと 1922-)氏が、日本の出版文化への思いをつづった『本は生まれる。そして、それから』が、今月、幻戯書房から発売された(本体3800円、381p、ISBN:4-901998-00-5)。刊行を記念して、以下の通りトークイベントが行われる。「知的」ブランドはいかにしてかたちづくられたか。出版界の大先輩の肉声を聞く、またとない機会をお見逃しなく!

ジュンク堂書店池袋本店「JUNKU 連続トークセッション」
日時:2月14日(金)午後6時半より
場所:ジュンク堂書店池袋本店4Fカフェにて
入場料:1000円(ドリンク付)、
予約:お電話又はご来店にてお申し込み先着順(定員40名)
お問い合わせ:電話03-5956-6111(池袋本店)

内容:敗戦の年にみすず書房を立ち上げた出版者の内省と記録――「良書の版元」として、多くの人々から支持されているみすず書房。その創業者である小尾俊人氏の新著『本は生まれる。そして、それから』では、氏の半世紀にわたる出版人としての歩み、親交の深かった人々の思い出、出版文化の理念について、などが語られている。新著の刊行を記念して、今回の講演では、小尾氏とかかわりの深かった著者・思想家のなかから、本書に登場する丸山真男、大佛次郎、長谷川四郎、片山敏彦などの思い出や、知られざるエピソードなどを語っていただく。

http://www.junkudo.co.jp/


■「スーパーエディター」ヤスケン氏、肺がんで逝く

自らがんであることを公開し、近づく死の影と対峙しつつ、オンライン書店bk1で「編集長日記」をしたためつづけた編集者にして評論家、安原顯(やすはら・けん=本名あきら)氏が、1月20日、肺がんのため死去した。63歳だった。昨年秋のカミングアウト以来、闘病記を連載していたが、口述筆記させた1月6日掲載分を最後に、そのまま帰らぬ人となった。最晩年の怒涛の新刊進行はいま大方、実を結んでおり、書店で購入可能。bk1では「ブックサイト・ヤスケン」に追悼文を随時アップし、名残を惜しんでいる。

http://www.bk1.co.jp/
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